今日の東京は雪。
ぼた雪が結露窓の向こう、風向きを教えている。
数羽の鳩が首をすくめ電線でうずくまっているのも見える。
自分は学生時を岩手で過ごしたので、雪を見ると懐かしくなる。
町は天からひたすらに振りかけられた雪で明るくなる。
一面の雪原を車で走るときなんて、それは海を行く船上での感動と似ている。
深呼吸すると心の奥の奥まで、白さとひんやりした空気が染み広がってゆくようだ。
学生の頃、ある夜の帰り道。
街灯の明かりは雪に反射され、夜道は明るく音をなくしていた。
振り返ると雪の中の足跡はずっとずっと過去へと続いていた。
しかし、ずっと向こうの足跡はもう既に降り注ぐ雪で角の取れたものになってきている。
足跡はどれだけ残してもやがて消える。
そういった感覚が今でも自分の中にあるのは、その頃からかもしれない。
でも、誰も歩いていない新雪の道を行くのは勝手やろうけど、遭難はしたらいかんよね。
いや、遭難しても戻ってくればいいのか。
窓の結露は好きだ。
外は寒く、室内が暖かいからできるわけだからね。
暖かい場所に居れて、コーヒーを飲んでいられることに幸せを感じる。
雪はまだ降っている。
積もればいいのに。
そしたら新雪の道をムギュムギュ歩くんだ。