ありけん日記


有田健太郎の日記、エッセイ、フォトギャラリーです
by KeN-ArItA

<   2014年 03月 ( 3 )   > この月の画像一覧

春の入り口、脱出の午後

 日々が詰まってくるとすぐ旅に出たくなる(現実逃避)。
しかしそうも言ってられない。
そんな時は、がんばって午後だけでも時間を作って脱出するのである。



e0071652_64875.jpg
【西武線、特急レッドアロー号】




 いつもは都心に向かう電車、逆方向に進むとちょっと新鮮よね。
1時間半もすればお気に入りの山の駅に着く。



e0071652_634182.jpg
【地味よね】
こういった風景がなんだか故郷(福岡)に似ている。




 西武秩父線『高麗駅』。
10年程前ふらっと降りたのがきっかけで、それからてんてんと足を運ぶようになった。



e0071652_635616.jpg
【いつもの坂道にて】
一人タイマー撮影は被写体がいないためピントが合わせにくい。
ブレとうね(笑)




 ここは地味な土地だけど、なんだか実家の里山に似ていて落ち着くのだ。



e0071652_63344.jpg




 路地を曲がり曲がり下って、高麗川を渡ると巾着田に着く。
ここは秋になると曼珠沙華でいっぱいになり、人もいっぱいになる。
都心を抜け出してわざわざ人だかりに入るのも意味がないので、その時期は避けるようにしている。
その他の季節は、人もほとんどいなくてのんびりとしている。



e0071652_635624.jpg




e0071652_634718.jpg
【小川のほとり、オオイヌノフグリ】
かがんで小宇宙。




 高麗はオオイヌノフグリでチロチロ輝いていた。
というかオオイヌノフグリしかなかった。
まあよいではないか。



e0071652_632690.jpg
【山は冬が終わったばかり】



e0071652_633964.jpg
【巾着田にて】
この場所にはちょうどよい杭があって、そこにカメラやスマートフォンがきれいに置けるのだ。
そりゃあ見逃さない、タイマー撮影。




 水車小屋を突っ切って野っ原に出る。
そこは大地を覆う菜の花の芽、芽、息吹、息吹。
3週間後にまた来たいな。



e0071652_633859.jpg
【秋はコスモス畑、春は菜の花畑】




 さらに進めば目的地の藤棚。
5月になれば立派な花が、ぶどうみたいに下がり咲くよ。



e0071652_6415484.jpg




 ノートとかも持ってきたのだけど、お昼寝。
日射しが暖かい。
これでいいのだ。
とことんほーっとしよう。



e0071652_633491.jpg




 日射しは暖かくも、風はまだまだ服に染みて身に冷たさを届ける。
影が伸びきる前に帰るのだ。



e0071652_631724.jpg
【梅の花はもう晩期】
春の芽盛り、その時間の流れは早いよね。
置いていかれないように駆け足駆け足。



e0071652_633035.jpg




 ビール買っちゃった。
薄い夕陽、橋に寄っかかってほよよ、よい時間。



e0071652_632527.jpg




 夕陽がまだやわらかい。
そのうちすぐ手をかざすようになるね。
帰り道、上り小路、けだるさが心地よい。



e0071652_633115.jpg
【夕陽を受ける高麗駅】




 ちょっとやったけど急速充電、よい時間やったよ。
ありがとう。

 さあ、帰ったらリハーサル。
頑張るのだ!
[PR]
by KeN-ArItA | 2014-03-25 06:05

国立(後編)

 僕らがオヤジと呼んでいた管理人はクリスチャンで、人間味溢れる東北のおっちゃんだった。
僕がギターをかき鳴らせるように地下のポンプ室を貸してくれたり、お菓子をくれたり、個人的に部屋に遊びに行ったこともあった。
しかし、規則を破るととてもおっかないオヤジに変わった。

 まさに今がそうである。


 廊下に出てこない1人の存在に気づいたオヤジは、僕の部屋を力強くノックした。 

 隠れて、隠れて!
ダメ!ベットはダメ。

 出てこいという催促の声と、中で息をひそめる僕ら。
まるで警察と犯人が作る緊迫のワンシーンのようである。

 じゃらじゃらと鍵が鳴っている。
スペアキーだ。
ああ、入って来る、もうダメだ。
というか僕は犯人ではない。

 その時、山瀬が大きな声で僕の名を呼んだ。

 ごめんごめん!
すみませーん、この中にいる女の子、僕の友達なんです。
僕がかくまってくれるようにお願いしたんです。
もう出てきていいよー。

 その後、山瀬がどれだけ怒られたかは知らない。

 山瀬は、夜遅く東京からやってきた女の人を泊めてやろうと、寮の裏側から回って部屋に入った。
当然窓外の赤外線が切れるので管理室の警報は鳴る。
警報が鳴ってもそれが誰だかまでは分からない。
ところが、新雪の積もる寮の裏手には山瀬の部屋の前までしっかりと大小2つの足跡が残されていたのだ。
雪国を理解していない寮生のバカなミスであった。

 普段なら見回るだけのオヤジも、これには怒って山瀬の部屋へ向かった。
しかし、部屋には山瀬しかいない。
そこでオヤジは招集をかけたのである。
山瀬はちゃんと事情を説明してくれたようで、僕は怒られずにすんだ。

 

 自由だと思っていた生活も、慣れてくればそれは普通の生活になった。
毎晩集った寮仲間もそれぞれに社交がひろがり、集まることもあまりなくなった。
僕らは1年で寮を出てアパート暮らしをするのだが、その日、最近あまり見かけない山瀬がめずらしく部屋へやってきた。

 借金の保証人になってほしい。

 ほらきた。

 その時期、はやり始めた消費者金融とゆうものだった。
 
 山瀬は入り用の事情を早口で説明していたが、よく覚えていない。

 印鑑だけは押すな。保証人だけにはなるな。
保証人となって、大きな財産を失った祖母が実家を離れる僕に送った言葉を思い出していた。

 しかし、それにも関わらず印鑑を押したのは、これでヒッチハイク失敗事件(前編)のかりが返せると思ったからである。
なんとあまあまな学生達であったろうか。
数ヶ月後、僕は電話口で知らない男からの借金の返済を求められていた。


 そんな電話は山瀬にかけてくれ。

 あんた保証人でしょ、出ないんだよ、いくら電話かけても。

 僕は山瀬を探した。
しかし、いなければ、電話も出ない。

 やられちゃったね~、よくある話だよ。
まあ、いい、月々よろしくね!
金融会社の男は友達のような口調でしゃべるが、容赦はなかった。
祖母の言葉が頭をよぎった。
血は繋がり、因果応報、ため息は深かった。

 それでも僕がそれほど焦ってなかったのは、東京にある山瀬の実家を知っていたからである。
だけど、こういった事情を親切にしてもらった両親に知られたくなかった。

 電話すると、山瀬はあっさりそこに居た。
詫びる山瀬に疑心を感じてしまうのは、最近ずっと学校にも出ていなかったからだろう。

 2ヶ月後、金融屋からの催促が再び始まった。
今度は、実家に電話をかけても山瀬はおばさんからの取り次ぎに出ようとしなかった。
僕は金融屋に月賦を払った。
しかし催促は次から次へときた。

 ここ最近、よくかかってくる僕からの電話が事務的で緊迫していることを感じた山瀬のおばさんが、その理由を求めてきた。
僕はそれでも友達への何気ない電話を装った。
しかし、おばさんはおそらく気づいていたのだろう。

 ようやく山瀬が受話器を手にした日、僕の怒りは爆発した。
電話をとりついだばかりのおばさんに聞こえるように、寮中に響くような大きな声で吐き出した。
金融屋からの催促はその日を境になくなった。

 最後に会ったのはいつだろうか、山瀬はいつの間にか退学していた。



e0071652_18574724.jpg




 あれから20年近く経つ。
高架で立派になった国立駅に昔の面影はない。
それでも国立駅を通過する時、今でも暖色に思い出すことがあるのだ。

 小路地を猫のように練り歩いて辿り着いた山瀬の家は、どこら辺だったろうか。
今でもこの街の、びっしりとひしめく家々の間に収まっているのだろうか。
両親は元気にしているだろうか。
妹は、お嫁にいって幸せに暮らしているだろうか。
山瀬は元気に生きているだろうか。

 お土産を持って再び遊びに行けると思っていた。
もっと仲良くなれると思っていた。


 人生とはそういうものさ。
この便利な言葉をよく使うようになった僕は、中央線のドア脇に立っている。

 なぜ、暖色なのか。
それはあの時、流れた幸せな時間が確かに存在して、僕の中のどこかに残っているからだろう。

 少しの笑みと深呼吸。
ホームにある『国立』の表示がヒョンと流れていった。




e0071652_1931199.jpg
【世界はでっかい】
出会う人は一握り、出会わない人は幾千万の数。
あいつは一握りの一つ。



e0071652_18572879.jpg
【春、やってきた】
三月も中頃、いよいよ春やね。
冬が厳しかっただけに、さあたくさん光を浴びよう!
[PR]
by KeN-ArItA | 2014-03-17 07:38

国立(前編)

 まだ夕方とも言えない遅めの午後、車内にいくつか残る空席も見つけることができたが、そこに収まるのも面倒に思えてドア際に立って景色を見ていた。
急に冷えてきたからだろう、窓には結露がプチプチとひしめき合い、光を集めて白くなっていた。
窓を擦ると流れ落ちる雫、その向こうの町並みは水の中の様に歪んできれいに見えた。
立川を発った中央線は、次の駅「国立(くにたち)」をアナウンスした。


 岩手の大学に入学して寮に入った僕は、すぐに仲間ができた。
親元を離れ自由になった僕らは、毎晩誰かしらの部屋に集まり、まだ飲めないお酒を知った風に飲んだり、タバコを吸ったり、ゲームをしたり、夢を語り合ったりした。
僕らはそんな生活を自由だと思った。

 夏休みに入ると仲間達はそれぞれの故郷に帰省し始めた。
実家が福岡と遠いにもかかわらず、ヒッチハイクで帰ると言い放った僕は、東北自動車道の矢巾サービスエリアにいた。
フェンスを乗り越えて侵入したのだ。
関東方面のトラックのナンバーを見つけては、勇気を出してその運転手に声をかけた。
しかし、なかなか頷いてくれない。
荷物はでっかいバックにエレキギターと傘。
それはきっと怪しかったに違いない。

 半日声をかけ回って全滅した僕は、さすがに現実の厳しさに直面して落ち込んだ。
その時、遠くで汽笛の音が聞こえた。
再びサービスエリアのフェンスを乗り越えてしばらく歩き、東北本線の矢巾駅から各駅停車で南下することにした。
 
 本気でヒッチハイクで福岡まで帰れると信じていた僕の所持金は1万5千円程度だった。
なんと世間知らずであまあまな学生であろうか。
 それでも戻ることはせず南下を続けながら、まだ帰省していない寮の仲間に電話して案を求めた。
すると、同じ寮仲間である山瀬の実家が東京にあるので、そこに電話してみろと助けをくれた。
 まだ携帯電話が普及しきってない時代。
公衆電話はテレホンカード荒っぽく吸い込み、やがて僕と山瀬を繋いだ。

 とりあえず国立駅まで来い。
22時過ぎ、青森から続く東北本線はその終着の上野駅に滑り込んだ。
山瀬の指示どうり乗り継ぎ、夜遅く国立駅に辿り着いた。
なんとかなるさと思いつつも心細かったのだろう、山瀬を見つけた時は安心感でどっと気が抜けた。


 山瀬は同学年ながらも3つ程年上だった。
一度社会に出て、それから考え直して学生になったらしい。
バーテンダーとして働いていた山瀬は、カクテルを作るのが上手だった。
寮では、よく何かしらカクテルを作ってもらった。
「カクテル」なんて響きは大人になったような気がして、お気に入りだった。
しかし、会話や波長はどちらかというと合う方ではなかった。
 
 山瀬は4人家族。
国立駅から裏路地をしばらく練り歩き、びっしりと詰め合った住宅街のひと角にその家は自然と収まっていた。
両親は、息子の突然で突拍子もない友人にもやさしく、予定のない自分は誘われるがまま数日泊まってゆくことになった。

 次の日、予定のある山瀬は妹に僕を預けて出かけて行った。
どこにゆけばいいものかをおばさんに聞いていた妹は、やがてドアを開けて、僕を東京の町に連れ出してくれた。
 高校一年生という、まだ幼さが残る山瀬の妹と並んで歩く。
なんだか照れくさかったが、少しずつ会話もできるようになっていった。
 午後には都庁の最上階で東京を見渡していた。
こんなにたくさんの人間がいるのか。
世界の大きさに圧倒されて、なんだか自分の夢や希望がちっぽけに思えた。
 その後もいろいろと案内してもらったが、よく覚えていない。
国立駅を降りて小路地の帰り道、だいぶん打ち解けた僕らの会話には、一抹の恋心も混ざっていたように思う。

 その夜は家族全員とともに行きつけの料理屋に連れて行ってもらい、カラオケにも行った。
家族でカラオケに行くなんて、自分の家では考えられなかった。
今でもよく覚えてるくらいにとても楽しい時間だった。

 結局三日後、山瀬にお金を借りて高速バスで無事帰省したのだった。



e0071652_758374.jpg




 寮での生活は、門限さえ守れば咎める者もなく好き勝手なものだった。
ギターを弾いたりパチンコに行ったり、学校に行ってもレッスン棟でピアノを弾いたり。
やがてありがちな、授業そっちのけのダメ学生となった。
山瀬も似たようなもので、どこに行っているのか部屋を空けることが多くなった。

 1学年の終わりも近づいていたある冬の夜。
突然、ノックと同時に山瀬が部屋に飛び込んできた。
ごめん!この子を少しだけ預かっておいて。
そう言うと同時に部屋を飛び出していった山瀬。
再び元通り静かになったかに思えた僕の部屋だったが、知らない女の人がぺこりと頭を下げていた。

 僕らの寮は立派な作りで、22時の門限になると周囲に赤外線がが張られた。
それを切ると発報し、僕らがオヤジと呼んでいたおっかない管理人が懐中電灯を揺らしながらやってくるのである。
見つかれば次の日呼び出されて、主任なども含めて説教される。
1階だった僕らの窓は全開にならないようにビス止めしてあったが、僕らはドライバーでそれを外し、よく深夜に窓から抜け出してこっぴどく怒られたものだった。

 やがて廊下にオヤジの怒った声が響き始めた。
深夜の男子寮に女の子、これは誤解しない方がおかしいと言えるだろう。
なぜこのような爆弾が僕の部屋に持ち込まれたのか。
しかも、もう導火線に火がついてるようなものではないか。
僕は彼女にコーヒーを差し出した。

 全員、鍵を開けて部屋からでてこーい!

 オヤジの怒った声が廊下に響いた。
僕は音がしないようにそっとサムターンを回し、ドアに鍵をかけた。



続く、、
3/17(月)朝方更新




e0071652_801277.jpg

[PR]
by KeN-ArItA | 2014-03-13 08:01


twitter
以前の記事
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 12月
2005年 11月
2005年 10月
2005年 09月
記事ランキング
画像一覧