5月の遅い午後の西東京は薄い晴れ空で、初めて見る小さな河原では地元の人達がそれぞれによい時間を過ごしていた。
雨の季節を前に、水端ではあじさいよりも先にアヤメが盛期を迎えている。
やはりここに出たか。
方向は読み通りだった。
通勤電車が動き出してちょっとすると、車窓を小さな川が通り過ぎる。
一瞬で通り過ぎるのだけど、なんだかきれいな川の様なので前々から気になっていたのだ。
【落合川。やがて黒目川となり、荒川へと合流する】
線路の向こう側の地域はあまり知らない。
子どもの頃は『探検にいこうぜ!』、まだ行ったことのない町内を自転車で走り回ったものだった。
しかし、今では散歩の範囲でしか動かない。
今日は気持ちがいいので『散歩』から『探検』に切り替えて、線路の向こうのあの川へ行ってみようと歩き出したのだ。
【眩しく、バンジー。川端道端にて。】
【自由気まま。鳥君、何かみつかったのかな?】
休日の町は穏やかだよね。
やっぱり休みでリラックスしている人が多いからだろうか。
平和な空気が通りに沿って心地よく漂っている。
川は東京とは思えないくらいきれいだ。
自分の家のすぐ側を流れる黒目川の支流なのだが、ぜんぜんこちらの方がきれい。
なんだこの違いは。
鯉もこっちの方がやる気あるし(そんなことはない)。
こんなきれいな水草、うちの方にはないぞ。
く〜、持って帰って植えたいくらいだ。
【なつかしいね、ザリガニ。よく捕まえた!】
子どもの頃を思い出す。
濡れるつもりはく水端へ降りて行くのだけど、結果は絶対に濡れてしまっていた。
しかし5月というのに水着を着た子どもまでいる。
こんなきれいな場所が近くにあったとは。
深いな東京。
【落ちたー!だけど兄貴はザリガニに夢中】
この川の先はどんなになっているのだろう。
この道をずっとゆけばどこに着くのだろう。
あの山の向こうはどんな世界があるのだろう。
あのとんでもない上り坂の向こうは、やっぱりとんでもない坂道なのだろうか。
子どもの頃過ごした小さな町は、それでも果てしなく未知に溢れていた。
海の向こうは?宇宙の果ては?
行動範囲が広がった今でも未知がなくなることはないのだろうが、たまにはすぐそこ、ご近所を散策するのもよいかもしれない。
これといって遊ぶことが見つからない時の名ゼリフ『探検に行こうぜ!』
懐かしい。みんな元気にしてるかな。
【緑の季節、きっといつもの散歩道】
帰り道は対岸の歩道をゆく。
小さな鉄橋を西武線がかけてゆくのが見えた。