旧ありけん日記 |
すぐ西にそびえ立つ絶壁の下を歩いて行く。
水はもう残り少なくなってきた。足もフラフラである。 くそぅ…、ありけんは今回の指令の厳しさを思い知らされていた(注:自分で決めた)。 時間があるといっても陽はもう崖の向こうへいってしまっている。 急がなければ。 時折大きなスズメバチが目の前を横切ってゆく。 おいおい、あんなのに刺されたらもう、、ガイコツである。 『ミュージシャン浜辺で孤独死!売れたかった…』 『なぜそこまでこだわった、アザラシの謎!?』 スポーツ新聞の片隅でこんな書き方されてはかなわない。 いかんいかん、気をつけなければ。 あの崖の向こうにきっと、アザラシがうようよいるはずだ。 よーし、あわよくば乗ってやる。 しかし、早く見つけなければ満ち潮で戻れなくなる。 よし…、行こう。 われわれ取材班は(注:一人)長い道のりを経てついにその時を向かえるのである。 崖を抜けると… いたー! …違う、巨大な怪鳥だ(普通の鵜) いたーー! 違う…、設置網のウキだ 帰り道は長かった。 振り返ると驚く、浜辺だけで遥かあの先まで歩いたのだ。 アザラシは…、きっと暑いから北極に帰ったんだな。 きゅーって、ゴマちゃんみたいなのがいると思ったのに。 だいたい無計画すぎるんだよ。下調べも少なすぎるんじゃないか? いやいや、だから面白いんじゃないか。自分だって最初は大盛り上がりだっただろう? でもいい大人がこんなバカなことやってていいのか?もっと素敵な北海道があるんじゃないか? これのどこがバカだってゆうんだ!よそにはないぞ!最高じゃないか。 飲み水だってもうないし…。 だいたいお前がいつも弱気だから、ステージだって波が出てしまうんだろ! おれのせいにするなよ。だいたい旅先でステージの反省会はなしだろう! いかんいかん、自分と自分が喧嘩し始めた。 疲れても楽しく行こう。 歌でも歌おう! アーアーアアアアアー…(北の国からのテーマ) やっとの思いで車までたどり着いたありけんは、飲み物を求めて町へ向かった。 小さな港で自販機を発見。生き返る。 危なく熱中症になるところだった。 海に行く時は、水は2本必要やね。 写真は麓の町の子ども達。 おーーい!手を振るありけん。 少し動きが止まり、再び崖を行く子ども達。 無視された。 さて、「アザラシとキタキツネ探索も失敗に終わったな」など思いの方もいるのではないだろうか。 ありけんをナメるな!そんなにやわではない! 日没まではまだ時間があるのだ。あきらめないぞ! 一息ついたありけんはアクセルを踏み込んだ。 作戦B始動、『山や海を車で見回り大作戦(らくちんコース)』(やっぱり疲れてる)。 しかし、このらくちんコースが思いもよらぬ結果を生むのである。 正直、自分自身もうダメなのかなと思い始めていた。 夕陽の中の野取湖(ほぼ海)を通過中、ありけんは海水に浮かぶ大きな動物を見つけて車を止めた。 おいおい、今のちょっと大きかったぞ。 高まる期待感。 そしてついに。 いたーーー! われわれ取材班は(注:一人)ついに自然のアザラシを発見したのだった! 野取湖のノトリーちゃんです。 そして、振り返ってみれば夕陽の中になんと! いたぁーー! 紹介します。 キタキツネの『ノトロン・コン・ゴン太君』です。 はぁ… 夕焼けがきれい。 心まで夕焼けのようにきれいになる感じ。 さあ、もう宿に行こう。 ユースホステルって知ってる? 実は自分もずっと『ユースホテル』って呼んでいたくらいだから、すごいど素人なのだ。 宿主(ペアレント)が暮らしていて民宿のような感じなのだけど、決定的に違うところは旅人同士が相部屋(ドミトリー)で過ごすのだ(場所に酔っては個部屋もある)。 夜にはティータイムがあり、宿泊者全員でテーブルを囲んで語らう時間もあって、いろんな話や経験も聞けるという楽しさもある。 しかし、一方では相部屋で気を使うというデメリットもある。 値段は安く、素泊まりなら3千円台がほとんどだ(食事が付くと高くなる)。 いつもはどこに泊まるか予測がつかない旅なのでビジネスホテルがほとんどなのだけど、今回は事前予約のユースホステルにしてみた。 少しドキドキするね。 夕食にはカニが付いていた。 北海道って感じで、なんか嬉しい。 美味しかった。 ペアレントさんにアザラシのことを聞いてみた。 「あー、夏はいないよ」 あっさりである。 食堂にはキタキツネの写真が貼ってあった。 ふくよかでかわいく威厳に満ちていた。 使うことはないと思ったが一応撮っておいた(使ってる)。 ルームメイトは40代の方で、やたらと話し好きな人だった。 13歳の頃からユースホステルを泊まり歩いて、280程もある全てに宿泊したことがあるそうだ。 さらに驚くことに、日本のJR全線だけでなく私鉄も全線乗りつぶしたと言うのだ。 この時点から言葉遣いを最高敬語に変えたありけん。 消灯後、ベットに入って横になってからも話は止まらず夜は進んでいった。 レース越しの月がきれいだった。 悪口が多いとこが少し笑えるこの人は、近年ユースホステルのオーナーになるのだそうだ。 いろんな話をありがとう。 またどこかでお会いしましょう! さんざんな旅初日から一夜明けた網走の朝。 朝食後、風の吹くビート畑での柔軟体操は心地よかった。 その後、石段でギターを弾いたありけんは車のキーを回した。 今日からはいよいよ列車の旅が始まる。楽しみだな。 なーに、旅はまだまだ始まったばかり。 キタキツネは道中に出会えばいいさ! さあ、行こう! ありがとう、網走。 その3へ続く
by KeN-ArItA
| 2010-09-09 16:02
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