ベランダの鉢植えたちの中に『カポック』という小さな木がある。
買ったときは葉っぱが2枚だったのに、少しずつ増えて『木』らしくなってきていた。
しかし、ある夏の日差しの強い日、よかれと思い外に出してあげたのが失敗だった。
いつも直射日光を受けないカポックにとっては強すぎたのだろう、その日以来若葉が枯れ始めたのだ。
徐々に枯れてゆくのが痛々しい。
やがて最初にあった2枚の葉っぱと新芽1枚を残して他はすべて枯れてしまった。
このまま枯れてしまうのだろうかと残念に思っていたある日、付け根に2ミリほどの突起を発見した。
それは日に日に少しずつ大きくなって葉の形になってきたのだ。
感嘆のため息である。
朝晩と霧吹きをするのだけど、「わーい」という声が聞こえてきそうだ。
また少しずつ葉をつけてくれればいいな。

肉や魚をはじめたくさんの生き物、みな目一杯生きているのもを食べるわけだから食事の前には『いただきます』と心を込めるようにしている。
しかし自分、実は植物に対してはあまりそうは思ってなかった。
草木も同じ生き物、たった1枚の葉っぱだって目一杯大きくなろうとしてるのだ。
これからはサラダを食べるときも、ありがとうと思わなければいけない。
【キンモクセイ】
これから紅葉の季節。
芽吹いてから虫にも食べられず、台風や雨、強い日差しや病気にも負けずに本木に栄養を送り続けた葉っぱたち。
それらが、それぞれの命を全うして今、散っていこうとしている。
「私は生きた」
ぷっと離れてハラハラ落ちてゆくとき、そういうつぶやきが聞こえてきそうだ。
その星数のようなこだまが山全体に響き渡る。
だから紅葉の中に佇むと涙が出そうになるのかもしれないね。
今年の晩秋は、そんな葉っぱたちの命を感じながら街を歩いてみよう。
【西高東低へ移りゆく】
ある日。
西から東へと大気が流れてゆく。
きっと明日は寒くなるよ。