早朝の電車、7人掛けのシートにはまだ空席があった。
向かいに座る女子高生の隣に一人の男性(40代)が座った。
すると彼女はすぐに席を立ちこちら側のシートに移動した。
「なぜ私が別の席に移ったか考えてみなさいよ」
おじさんはそういった難題を出されたのに等しい。
思わず服の臭いをかいでしまう男性。
わかりますその気持ち、、大丈夫、別におかしいとこはありませんよ。
そう言ってあげたい。
次の駅で別の男性が彼女の隣に座った。
するとすぐにまた彼女は向かいの席に移ってしまった。
やっぱり服の臭いをかいでしまう男性。
「くそー、おじさんだって生きてるんだ!若いからって何をしてもいいってわけじゃないだろう!」
衝動を抑えるありけん。
一駅ごとに乗客は増し、高校生にしては大人っぽい彼女の移動する席はなくなってしまった。
いつも通りの光景、列車は都心へと進んでいく。
いくつめかの駅で乗車してきた男子高校生が、彼女の前に立った。
挨拶を交わす2人を見てついに謎が解けた。
彼女は隣に彼の席をとっておいてあげたかったのだ。
常識ない高校生なら鞄でも置いておくのだろうが、彼女はそうはしなかった。
かわりに無謀とも言える挑戦に出たのだ。
なんとけなげな想いなんだ。
それならば2人のおじさんの犠牲もいたしかたない。
思わずほころんでしまった。
やがて彼女の隣の席が空いて2人は並んで座った。
坊主頭でさっぱりとした雰囲気、足の間に大きなバックを置いた男子高生はきっと野球部。
そんな彼は、ぽつりぽつりと彼女に話しかけ始めた。
『がんばっている』といった感じである。
しかし、どういう理由であるのか、彼女はあまりにもそっけないのである。
せっかく並んで座れたのに、、。
やがて彼は溜め息まじりにパチりと携帯を開いてしまった。
心の中の気持ちだけであれば上手くいくことが多い。
そこにちょっとした誤解、すれ違い、素直になれない気持ち、置かれた現状などが間に入るから上手くいかないのだ。
それが社会でみんなと生きてゆくってことなんだろうね。
だけどそんな障害を乗り越えて通じ合えたら、もっと深まった付き合いになることも間違いない。
生きてゆく色合いもぐっと深まるはずだ。
乗客が増えてきた。
彼は、彼女が隣に席をとっておこうと人目を気にしながらも動き回っていたことを知らない。
手持ちぶさたに携帯をいじっている彼の顔を、彼女がちらりと見た。
【ツル系、伸び放題】
クローバーってこんなに這ってゆくものなんだ。
なるほど広大な大地が似合う訳だ。
冬どうなるんだろ。。
【みにくいアヒルの子】
空いていた鉢植えに小さな芽が出ていた。
胡蝶蘭にでも成るかもと、とりあえずほっておいた。
そしたら『ザ、雑草』といった見事な雑草になった(写真右)。
雑草も売ってある立派な花も同じ植物である。
一生懸命に芽生えて、目一杯生きようとすることに差なんてないのである。
だけど引っこ抜く!
そこには花が咲いていてほしいから。
だから雑草は強いのだ。
人間社会も似ているね。
きれいごとでは生き抜けないのだ。
強くならないと。
だけどこの雑草、1本だけだし、もう少し様子をみてみる。
【こんにちはシクラメン】
枯れ果てたと思っていた冬の花『シクラメン』。
種から芽が、、。
嬉しいな。
花まで咲くかな。
こいつらは本当に冬が大好きなんだな。
冬の入り口。
深呼吸して吐き出す息は朝陽を浴びて金色に輝くだろう。
やあ世界、おはよう!
マフラーをきゅっと巻いて、さあ、つかつかと歩き出そう。