旧ありけん日記 |
まだ帰宅ラッシュ前の夕方。
丸ノ内線に乗り込むと、すぐ後ろにいた女性が声をあげた。 ヒールをホームと線路の間に落としてしまったのだ。 しばらくして僕は、何やらあまり親切でない若い駅員を連れて彼女の元に戻ってきた。 安全柵に手を置いてヒールの脱げた片足をもう一方の足の上に乗せて、水鳥のようなかっこをしている彼女を見たとき、僕の中にある場面がよみがえってきた。 数年前、日本海を旅している時だった。 単線の北陸本線は、ある田舎駅ですれ違い列車の待ち合わせのためしばらく停車することになった。 時間帯は朝で、ホームには通学の高校生達がぞろぞろと流れている。 その中で目に留まったのが、学生たちの流れの中で抱き合うように寄り添っている一組の高校男女だった。 二人を横目で見ながら他の学生も、さすがにしらけ気味だ。 朝からお熱いなと目をそらしかけた僕だったが、違和を感じた。 二人はとてもこわばっていて、彼にいたっては試練にでも耐えているかのような顔をしているのだ。 それに、いたって若く清純そうな彼らが恋人というにはあまりにも無理があるように思われた。 やがて向かいの列車が出発して、謎が解けた。 彼女はホームと列車の間に靴を落としてしまったのだ。 そして片足の彼女が倒れないようにと彼は、肩をかしてあげていたのだ。 様子からして親しい感じではない。 もしかしたら初めての接点なのかもしれない。 列車が去ったと同時に彼は線路へ飛び降り、靴とともにひょいと飛び上がってきた。 そのままトンと彼女の前に靴を置くと、すぐさま階段の方へ歩き始めた。 屈んでちまちまと靴を履き終わった彼女は、彼の行ってしまった階段の方をじっと見ていた。 僕を乗せた列車が動き始めたころ、彼女のスカートが風を受けた。 階段に向かって駆けだしたのだ。 さて、丸の内線。 新社会人にしか見えない彼女と同じ年程の若い駅員は、僕に対する態度とはうって変って快活になり、「任せてください!」とばかりに駅室へ走っていった。 丸の内線はホームに安全策が設けられているので、ぽんと飛び降りることはできない。 きっと、マジックハンド〜(ドラえもん風)みたいなものを持ってきて、ユーホーキャッチャーの様に靴を持ち上げるのだろう。 うん、彼なら心配ない。 きっと彼女のために全力でミッションを成功させるだろう。 やがて次の電車が入線してきた。 「まあ、靴が電車にひかれなくてよかったね」 そんな気休めを言って、そこにいても仕方がない僕は赤坂見附を後にした。 座れた丸の内線。 旅先の高校生を思い出していた。 あの男子高生は勇気があったな。 同じ年の自分だったら、彼女を助けてやれただろうか? 「助けてあげたい!」と思っても回りの目が気になって行動には移せなかったかもしれない。 思い出してまた顔がほころんでしまった。 あの純情そうな彼女、彼に追いついた後うまくお礼が言えただろうかと。 最近お気に入りのオニオンチーズ。 カリカリしっとり、うまいのだ。 仕事仲間の大塚君と帰宅途中、よい公園を発見。 少し寄り道。 影が濃くなり始めた初夏の入り口、宵の口。よい時間。 夕暮れ前の帰宅コースは少し遠回りの『Cコース』。 自然があって好きだ。 小ガモが大きくなった。 よく洪水に負けなかった! 夕方になると暇なじいちゃんたちが集まって、パンを投げている。 写真上部にも投げられたパンが映っている。 「およ、もう食わなくなったじゃ」 どれだけあげてるんだか(笑) 見えにくいが、ハヤなどの小魚も多い。 鳩やスズメもパンをもらいにやってくる。 自分も柵に乗せた肘の上に顔を乗せて見ている。 ここは、みんなの集まる陽当りのよい場所。 菜の花の季節は終わりのよう。 もうじき雨の季節やね。 さあ、傘をクルクル、元気にいこう!
by KeN-ArItA
| 2012-05-16 17:15
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