旧ありけん日記 |
学生の頃、学園祭で露店を出したことがある。
学園祭に対してさほどの興味はなかったが、露天を出すと学生部から補助金3万円がもらえるのだ。 それだけでもよいではないか。 面白そうだし、一度はやってみたかった。 やがて学園祭当日、岩手山を望む大自然に包まれた校舎に『博多屋けんちゃん』とペイントされた露店が出現した。 福岡の友人に頼み、箱買いで取り寄せたマルタイ棒ラーメン(2食70円)。 これはインスタントラーメンにも関わらずストレート麺なのだ。 『本場地元の味!』として売り出すというぼったくり大作戦。 1食原価35円を300円にてご提供。 楽勝である。 しかし、故郷博多の名を汚してはいけないという思いも強い。 焼豚やネギ、ナルト、メンマ、わかめなど具沢山にして、安いながらも最高の一杯にしてやろうと思った。 補助金の3万円は、5万円にしてやろうとすぐさまパチンコ屋で消えてしまった。 社長、早くもピンチ。 時給100円で雇った後輩達(軽音楽部後輩)とともに迎えた当日。 お店のテントは自分も属する軽音楽部の野外ステージの横に設置された。 これで、ステージも店の経営もうまくいく。 完璧である。 『博多屋けんちゃん』は意外な盛況ぶりを見せた。 なにせ岩手で本場博多ラーメンである。 だれも知らないだろうという思惑は当たった。 「はいはい!いらっしゃいいらっしゃい! 長浜ラーメンなんてあれは観光用とよー! 地元のほんとの味はやっぱこればい!!」 地元でよく食べられているインスタント麺だからウソではない。 それに厨房は外から見えないようにダンボールでかこってある。 怪しいが抜かりはない。 完璧である。 寒い屋外、学園祭のにぎわい、見慣れぬラーメン。 こういったムードも助長して博多屋けんちゃんのラーメンは旨い!と評判になりつつあった。 このままいけば社長、ぼろ儲け! しかし問題はすぐさま起こった。 家庭用ガスコンロではたくさんの麺を同時にゆでることができないのである。 行列に対して少量しか提供ができない。 そうしているうちに行列は別の露店へ散ってしまう。 甘かった、、。 それに軽音楽部である自分はステージの度に店を空けなければならなかった。 後輩バイトどもも軽音部できつい仕事があるとこちらへやって来るが「この鍋に水汲んで来て」と言うと「あ、おれ、PAありますんで」などと逃げ帰ってしまう。 とどめに食堂のおばちゃん達が、本場生ラーメン??など言いつつドカドカと厨房の中に入って来て「インスタントだじゃ〜(爆笑)」と触れ回ったのである。 学園祭が終了していざ清算。 あんだけ走り回ってなんと、700円しか利益がなかった。 なんてこった、、経営とは難しい。 しかも後日、学生部からの催促で知ったのだが、3万円は学祭終了後に学校に返済しなければならなかったのだ。 なんてこった、もうないし。 結局、パチンコに負けた3万円分の大赤字に終わった『博多屋けんちゃん』。 幸い家には大量の売れ残り棒ラーメンがあった。 しかし、毎日食べ続けるともはや『まずい!』としか言いようのない食べ物だ。 何が本場博多ラーメンだ!! きっとインチキをしようとした罰が当たったのだ(時たま食べればおいしい)。 岩手の秋は短い。 秋は直線的に進んでゆくのではなく、放物線のように冬へと駆け上がってゆく。 山の端が暖色に染まり始めるちょうど今時期。 それでも思わず笑んでしまう想い出として今でも自分の中に残っている。 あの頃の自分が一つの点、幼いある一日もひとつの点、先日のライブイベントも一つの点、いろんな出会いも、出来事も、現在のひと時も全てが点だと思う。 それら一つ一つの点がつながって一つの人生となるのだろう。 鮮やかな点が多いのなら、鮮やかな人生と言えるのかもしれない。 何かをやろうとしたり、何かに参加したりすることは億劫でめんどくさい。 だけど思い切って飛び込んでみると、それは記憶に残る鮮やかな点になりうるもの。 また同時に暗黒の点にもなりうるのだろうけど、まあそれはしかたない。 それもまた個性のある点だろう。 チャンスがあれば、めんどくさがらず勇気を出して飛び込んでみようと改めて思った。 でも、博多屋けんちゃんは、もういいかな。 ![]() ![]() 春以来、ひっさしぶりに芽を出したカポック。 なぜ今時期。 でも嬉しいな。 ![]() 東京も少しずつ紅葉しはじめた。 記事:2012年11月ありけん日記より
by KeN-ArItA
| 2015-10-25 06:41
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