渋谷は冬晴れ。
早く仕事を終えた腹ぺこ僕は、行きつけのラーメン店(博多天神)に行った。
しかしそこでとんでもないミスをしてしまったのである。
いつも替え玉を最低2回はする僕なのだが、ついついぼーっと食べてしまい、こともあろうか替え玉をする前に完食してしまったのだ。
ああ…
プロとして(何のだ)あるはずもないミスだった。
空になった器をしばらく見つめ、完全に不完全燃焼のまま渋谷を後にした。
僕は昔からうっかり事が多い。
高校2年の時だった。
手ぶらで通学している僕は、ずっとなにかがおかしいと思っていたんだ。
しばらくして、カバンを電車の網棚に忘れてきてしまったことに気づいた。
「お前は何をしに学校に来たんだ…」
いつもすぐ怒る先生もその日は怒らなかった。
学校に来る途中、カバンを忘れるやつの気が知れなかったのだろう。
数日後、北九州の小倉北警察署から学校に連絡があり、カバンが発見された。
しかしずいぶん遠くまで行ったものだな。
2時間半かけて小倉までカバンを迎えに行く途中、僕のカバンがどんな所を通り、どんな人に見つけられ、どんな旅をしたのかを考えていた。
いいなー。
学生カバンの〜 一人旅〜
僕も〜 一人旅〜
気がかりだったのはカバンの中身。
カバンには、ストリートスライダースのCDとセブンスター(タバコ)しか入ってなかった。
警察所でセブンスターはまずいなぁ。
しかし警察署は、当時発砲事件や凶悪事件が多発する小倉の街にあった。
学生のタバコなんて、ゴミのポイ捨て程度である。
担当した警察官(なぜか年配の刑事だった)は、「おれもセブンやけん、おれにちょうだい?」そういって駅まで一緒に帰ってくれた(見知らぬ学制服は地元ヤンキーに狩られるらしい)。
学生カバンの〜 一人旅〜
僕も〜 一人旅〜
電車で遠くの街まで来れたことが嬉しかった。
2007年、さあもう確実に進みはじめました。
人は人に迷惑をかけ、人は人に迷惑をかけられながら生きてゆくものなのかな。
それにしても僕はかけ過ぎだ。
引き続き会えない人達もいるけど、待っていてください。
僕を苦しめたり、喜ばせたりする全ての感情を前に転がして。
辛い思いも、幸せな思いも前向きな力に変換して。
駆けながら一曲一曲に閉じ込めてゆこうと思う。
下り坂を転がるおにぎりを「あわわわ」って追っかける感じかな(笑)。
渋谷を出た電車は完全に不完全燃焼の僕を乗せ、大好きな池袋へ向かう。
車内は正月モードを抜け、いつものラッシュだ。
カバンはしっかりと手に持って。
窓に映る僕は、「帰ってラーメンを食べよう!」そう決めるのである。